先日、妊娠を理由に妻が趣味と実用もかねて長らく乗っていたバイクを買取してもらいました。

お金が入用になるから、お互いに無駄にお金を使ってしまうものは控えようと決め、どうせ妊娠して運転はできなくなるのだから、バイクは手放してもいいんじゃないかと妻に提案しました。

なんとなくそう伝えた後日、妻は「私のバイク売るね」と、私に言いました。

キッパリとバイクとの別れを決めた妻

大事にしたバイクを最初、私はこうも簡単に手放せるのかと不思議でした。

私は忙しかったので買取の段取りはすべて妻に任せたのですが、出張査定だけは一緒してほしいということで、休日に予定しました。

ところが予約をした後に休日に仕事が入ってしまい、何とか予定はずらせないかと妻は業者に連絡し、前日夜に変更してもらいました。

査定員はすぐに到着せず、電話がかかってきまして少し遅れるとのことでした。話を聞くと事故渋滞で大幅に遅れてしまったそうです。

外はもう季節的に随分と寒くはなっていたのですが、外で妻のバイクを前にして待っていました。

薄暗い中、アパートの駐輪場に置かれていた妻のバイクを長めながら、いろいろ思い出を振り返って話をしていました。

妻の愛車を売るのは本当は辛い決断だった

一番の思い出は、些細なものでした。うちは共働きで、妻は私が休みの日に朝早く仕事に行くのがいつものことで、妻は私に気を使って静かに家を出ていきます。

それでも私は気配で目が覚めて、窓から外を見ると、いそいそと駐輪場から道路の近くまでバイクを押していって、エンジンをかけ、職場までバイクで向かいました。

それを見ながら「気を付けていってらっしゃい」と心で声かけ、二度寝しました。夕方になるとバイクの音が聞こえて妻の帰宅が分かり、外に出て「おかえり」と迎えました。そんな日常が一番の思い出でした。

妻にどんな思い出が一番心に残ってるかと聞いてみましたら、「全部」と答え、黙ってしまいました。

妻の頭ではきっと10年近い思い出が全部思い返されていたのでしょう。

簡単にだなんてことは、やっぱりなくて、たくさん考えて、決断したのは当たり前のことで、それを思うと申し訳なく思いました。

バイクを手放した妻の勇気に感動

査定員が申し訳なさそうに到着して、査定がはじまり、金額が提示されました。妻は喜びも不満もなくただ一声で「それでお願いします」と答えました。

トラックの荷台に運ばれる前、妻が「あっ」と言い、写真を撮りたいと言い出しました。私と妻、妻のバイクを、査定員さんに撮ってもらいました。

そうして、トラックの荷台に乗せられ運ばれていった妻のバイク。

妻はそれが消えるのをずっと眺めていて、私はそんな妻を眺めていた私は、涙ぐんでしまいました。

大切なものを手放すと決心した妻に感動して、また、気軽にバイクを手放したらどうかと提案した自分を悪人に思ってしまいました。

けれども、振り返った妻は笑顔で「まとまったお金になってよかったね」と、答えたのだから、強いなと感じました。